売上1円に悩む時期こそ、「あなた」が武器になる
起業や独立を志す人が増える一方で、創業期は売上を1円つくることにさえ苦労する、もっとも過酷な時期でもあります。その0→1に特化して伴走しているのが、株式会社アトラスパートナーズ代表取締役の杉浦誠二さんです。
机が窓から飛んでくる教室で、いじめられないことだけを考えて育った少年。20社以上に落ちて拾われた会社でトップセールスにのぼりつめ、その絶頂でうつ病になり休職した。独立後は1000万円を超える自己投資を溶かし、手元に残ったのは借金と、毎月の返済だった。
長い遠回りの果てに杉浦さんがたどり着いたのは、事業でいちばん大事なのは何をやるかではなく、どんな想いで生きるかだ、という答えでした。最初にお話を聞くのは、本メディアを立ち上げた杉浦さん自身。少年時代から今の志まで、まっすぐ聞きました。
創業期の0→1を、ハンズオンで伴走する
編集部まず、杉浦さんの事業について教えてください。
杉浦柱は2つです。1つが経営コーチング、もう1つがビジネスコミュニティ「TANE」の運営で、どちらも創業期の経営者や個人事業主の0→1を支援しています。経営コーチングは、年商ほぼゼロの状態から3000万円ほどまでの、いちばん大変な時期をハンズオンで伴走するものです。創業期の方は、本当に1円の売上をつくることに悩むんです。そこに特化しています。
商品ではなく「人」で選ばれる
編集部経営資源が限られる創業期に、何で差別化するのでしょうか。
杉浦私自身、ここで一番悩みました。創業期は商品やサービスそのもので差別化するのが難しい。では何で勝つのかと考え抜いてたどり着いたのが、その人自身の人生とストーリーでした。本人が無意識に蓋をしていた、譲れないこだわりや過去の痛みまで掘り起こして、言語化して武器にする。そうすると、「あなただからこそ任せたい」と言ってもらえる。人そのものを、ビジネスの強みにするということです。
その人のこれまでの人生を聴きながら、どう生きたいのかという軸をつくり、事業のミッション・ビジョン・バリューに落とし込む。さらにセールスの導線やKGI・KPIの管理まで一気通貫で伴走します。志を言語化して終わり、ではなく、売上の仕組みまでつなげるのが当社のやり方です。
コーチング × セールス × AI
編集部支援には、独自の組み合わせがあるそうですね。
杉浦コーチングで経営者の心の軸を整え、セールスで事業を着実に伸ばし、AIでそれを一気に加速させる。この3つを掛け合わせる形は、他にあまりないと思います。AIは、ただ作業を速くする道具ではありません。機械に任せられる面倒な作業は徹底的に任せて、しかも自分の会社で使いこなせる状態まで一緒につくる。そうすれば経営者は、自分にしかできないこだわりや、人間にしか出せないアイデアに集中できる。一番最先端なのに、一番人間くさい。そんな関わり方をしたいんです。
自分を押し殺して生きた、八方美人の少年でした
机が飛んでくる教室で、目立たないことだけを考えた
編集部その「人を言語化する」という発想は、どこから来ているのでしょう。
杉浦今になっていちばん思うのは、自分の人生を自分で選んでこなかったな、という後悔なんです。その原点は、名古屋で過ごした少年時代にあります。通っていた学校が、今思い返してもかなり荒れていて。授業中に窓から机が投げ落とされる。鉄パイプを持った同級生が、血相を変えて先生を追いかけ回す。そういう光景が、すぐ隣にある毎日でした。
その中で、とにかくいじめられないことだけを考えていました。自分はこうしたいと少しでも口に出すと、すぐ目をつけられて標的になる。だから自分の意見は絶対に出さない。周りの顔色をうかがって、その場の空気にひたすら合わせる。誰にも嫌われないように、目立たないように。それが、自分を守る唯一の方法でした。唯一ほっとできたのが、小学5年から始めたバスケです。仲間とボールを追いかけているときだけは、素の自分でいられた気がします。
家でも「いい子」で、自分の気持ちは後回し
編集部ご家庭では、どんなお子さんでしたか。
杉浦家でも同じでした。年上の兄と親が、しょっちゅう激しくケンカをしていて。私はいつもその間に入って、場を丸く収める役だったんです。親をこれ以上悲しませないように、兄をこれ以上怒らせないように。自分の気持ちは後回しで、ただひたすら空気を読んでいました。そんな生活を何年も続けていたら、気づいたときには、自分が何をしたいのか、何が好きなのかも、わからなくなっていたんです。
自分の「やりたい」を言えなかった私が、
いま、人の志を言葉にする仕事をしている。
意志のないまま進んだ先で見た、「死んだ目の大人たち」
「安定」と「世間体」だけで、進路を選んだ
編集部進路は、どんな基準で選んだのですか。
杉浦自分の意志なんて、まったくなかったですね。理系に行っておけば将来困らないだろう、名城大学の理工学部なら親も安心するし、メーカーに入れば世間体もいい。愛知という土地柄もあって、メーカーは安定という、世間が言う正解をそのままなぞっただけでした。これがやりたい、なんて気持ちはひとつもなかったんです。
「このまま10年いたら、腐る」
編集部新卒で入った自動車部品メーカーでは、どうでしたか。
杉浦配属された生産技術の現場で、ゾッとする光景を見たんです。聞こえてくるのは、会社の悪口、上司への不満、同僚の足の引っ張り合いばかり。仕事を楽しんでいる人、誇りを持っている人が、一人もいなかった。いかにサボるか、いかに楽して時間をやり過ごすか、それしか考えていない大人たちが、そこにいました。
その瞬間、はっきり思ったんです。このまま10年ここにいたら、自分も腐ってしまう、と。生まれて初めて、自分の意志でここを出ようと決めた瞬間だったかもしれません。
トップセールスの絶頂で、心が折れた
20社に落ちて、やっと拾われた
編集部そこから、営業の世界へ飛び込むのですね。
杉浦転職活動では、20社以上から不採用の通知が届きました。最後の最後で、ギリギリ拾ってくれた会社に入ったんです。理系出身で、営業の経験はゼロ。ここで逃げたらもう後がない、という崖っぷちの気持ちでのスタートでした。最初はまったくダメで、どれだけ歩き回っても契約は取れない。ノルマだけが毎月のしかかって、連日詰められる。それでも、ここで変われなかったら一生人に合わせるだけの人生で終わる、という意地で食らいつきました。どうしたら人の心は動くんだろう、それだけを考えて泥臭く動き続けて、入社2〜3年目で、ようやくトップセールスと呼ばれるところまでいけたんです。
一日中、ただ謝り続ける日々
編集部順調に見えますが、何が心を折ったのでしょう。
杉浦ある1年間、クレーム対応だけを専任で任されたことです。朝から晩まで、お客様の怒りをただひたすら受け止める。謝って、改善案を出して、また頭を下げる。その繰り返しでした。一人の人間ではなく、謝るための機械になったような毎日です。人は、誰かの役に立てているという実感があるから、しんどくても頑張れる。でも当時の私には、その実感がまったくなかったんです。
朝、目を覚ますと強い吐き気がして、会社へ向かう足が震える。オフィスで電話をかけようとすると、心臓が痛くなる。頭から離れなかったのは、私はいったい何をしているんだろう、という問いでした。最後は糸が切れるように限界を迎えて、うつ病と診断され、休職することになりました。気づいたら私は、一歩も動けない暗闇の底にいたんです。
休んでいる間に痛感したのは、ある程度の規模の会社では、自分がいなくなっても何も変わらないということでした。自分は大きな歯車の1つでしかない。だからこそ、自分で生きていく力を身につけなければと、復職後に動き始めました。
1000万円を溶かした迷走と、人生を変えたひとつの問い
自己投資を重ねても、人生は何も変わらなかった
編集部復職後は、副業の世界に飛び込んだそうですね。
杉浦自分の力で稼げるようになって、何者かになりたい。その一心でした。でも始まったのは、理想とはかけ離れた迷走の数年間です。まず100万円を払って不動産投資のコンサルを受けましたが、物件はひとつも買えずに終わる。焦っていろいろな副業に手を出しては、これは本当に誰かの役に立っているのか、という違和感だけが残る。ようやく少しずつ形になった事業もあって、副業で年商4000万円まで伸びたこともありました。それでも、SNSで華やかに稼ぐ人たちを見ては、あの人たちのノウハウさえ買えば自分も変われるはずだと思い込んでいたんです。高額なコンサルや広告に次々とお金を払い続けて、気づいたら、注ぎ込んだ額は1000万円を超えていました。
手元に残ったのは、1000万円を超える借金と、毎月20万円近い返済でした。完全に、人生のどん底です。でも、その暗闇が長くあったからこそ気づけた。ノウハウにお金を出して学ぶだけでは、人生は変わらない。土台になる自分がグラグラのままだと、どんなに高いノウハウを買っても使いこなせないんです。それどころか、私の自信のなさや焦りが、夢を持って一歩踏み出そうとする人を食い物にする、不誠実な人たちを自分から呼び寄せるスキになっていた。自分が騙されてもがき苦しんだからこそ、そういうやり方に、心の底から震えるような怒りが湧いてきました。
「本当は、どう生きたいの?」
編集部どん底から這い上がる、きっかけは何だったのですか。
杉浦ある経営者の方から、かけられた一言でした。その方は、最新のマーケティングを教えてくれるわけでも、儲かる話を紹介してくれるわけでもない。ただ、こう聞いてくれたんです。「杉浦さんは、本当はどう生きたいの。何を成し遂げたいの」と。頭を殴られたような衝撃が走りました。それまで私が必死に追いかけていたのは、SNSで見かける誰かの成功法則や、すごいと言われるための一般的な答えばかり。子どものころ、学校や家で嫌われないようにと人の顔色をうかがってきた、あの癖を、ビジネスの世界でもそのまま続けて、自分じゃない誰かになろうとあがいていただけでした。
軸が決まった瞬間、迷いが消えた
編集部そこから、自分の軸を言葉にしていったんですね。
杉浦はい。結局、ビジネスの結果を決めるのは、最新のツールでも、うまいセールストークでもないんです。自分は何のために働くのか、どんな想いで生きるのか。その軸に沿った、毎日の小さな選択の積み重ねなんですよ。人は、自分が意識しているものしか目に入りません。赤い車を買おうと思った日から、街中の赤い車が急に目につくようになりますよね。あれと同じで、自分の中にこれがやりたいという軸がないと、せっかくのチャンスが目の前を通っても気づけない。逆に、軸さえはっきり決まれば、必要な情報も、人との縁も、自然と引き寄せられてくるんです。
これまでの情けない失敗も、惨めな思いも、全部ひっくるめて受け入れて、自分は何のために生きて、どんな世界をつくりたいのかを、腹の底の嘘のない言葉にしていきました。そう腹落ちした瞬間、不思議なくらい、迷いが消えたんです。
経営は、99%うまくいかないことの連続。
最後にものを言うのは、自分の信念から来る志です。
心を震わせて生きる。100年後の日本を、100人と創る
AIの時代こそ、「どんな想いでやるか」で選ばれる
編集部これからの時代、何が選ばれる決め手になると考えていますか。
杉浦これからAIがどんどん進化して、技術もノウハウも、誰でも簡単に手に入る時代になります。そうなればなるほど、最後に選ばれる決め手は、その人がどんな想いでそれをやっているか、になる。真似できない人間性や、その人だけのストーリーでしか、選ばれなくなるんです。正解は、SNSの向こうの誰かが持っているのではない。自分の中にしかなかった。その確信が、今の私の事業の揺るぎない軸になっています。だからこそ、青臭いきれいごとだと笑われるような志を、誰にも文句を言わせないくらいの結果を出すための、最強の武器に変えたいんです。
誰かの心に火をつけられたとき、一番生きている
編集部杉浦さんが、生き方として大事にしていることは何ですか。
杉浦誰かに影響を与えられたとき、誰かの心に火をつけられたときに、私は一番やりがいを感じます。ただ、人の志に火を灯したいなら、まずは私自身が誰よりも熱く燃えていなければならない。そう思っています。私の結婚式で、司会の方がこう言ってくれました。「人生は、どれだけ長く生きたかではない。どれだけ心を震わせられたかが大事だ」と。この言葉を、今も仕事の真ん中に置いています。長く生きられるかは、誰にもわかりません。それでも、心を震わせる生き方はできる。そう信じています。
子どもが「大人って楽しそう」と立ち上がる未来へ
編集部「100年後の日本を創る挑戦者を100人輩出する」という志には、どんな思いがあるのですか。
杉浦きっかけは、自分の子どもです。本気で伴走した100人の経営者が、それぞれ10人の仲間に良い影響を与える。そこに1000人の熱が生まれて、その1000人がまた次の誰かを動かしていく。そうやって広がった熱を見た次の世代、私の子どもや孫の世代が、大人になるのってこんなに楽しそうなんだと、目を輝かせて立ち上がる。その連鎖の、いちばん最初のスイッチを押したいんです。
今は、逆のことが起きている気がします。電車に乗ると、ただ生活のために、嫌々仕事へ向かう人の顔ばかりが目に入る。日本は世界的に見れば豊かな国なのに、心が貧しい人がとても多い。だから誰かのために動く人が減って、どこか殺伐としてしまう。私自身、創業期にお金を搾取されて苦しんだからこそ、この流れを変えたい。自分の子どもに胸を張れる世の中を、残したいんです。
一人で戦う孤独を、なくしたい
つくる場がないなら、自分でつくるしかない
編集部もう1つの事業、ビジネスコミュニティ「TANE」は、どんな思いから生まれたのですか。
杉浦正直に言うと、コミュニティは構造上あまり儲かりませんし、労力もかかります。それでもやるのは、創業期の0→1は、一人で戦っていると本当に孤独だからです。売上が立たない時期に、弱音を吐ける相手も、応援してくれる仲間もいないと、人は簡単に折れてしまう。かつての私が、まさにそうでした。志を持って頑張る経営者一人ひとりが主役になって、挑戦する者同士が応援し合える。そんな場が世の中にないなら、つくるしかないと思って始めました。
このメディア「KOKOROZASHI」も、同じ発想です。メンバーが自分の志を語り、それが記事として残って、誰かに届く。語った本人の武器になり、読んだ誰かの心に火がつく。その循環をつくりたいんです。
社長の理念を、上から浸透させない
同じ力で漕いでいるのに、船が前に進まない
編集部最近は、組織へのコーチングも始められたそうですね。
杉浦はい。社員が20名から50名くらいに増えた会社から、声をかけていただくことが増えました。役員や部長クラスの5人から10人と、6ヶ月かけて向き合っています。
会社を1つの船だと思ってください。役員も部長も、みんな必死にオールを漕いでいる。力は十分にあるんです。でも、それぞれが違う方向を向いて漕いでいたら、船はぐるぐる回るだけで前に進まない。頑張っているのに成果が出ない会社では、たいていこれが起きています。やっているのは、オールの向きを揃えることだけです。
降ってきた理念は、覚えて終わる
編集部理念浸透を支援する会社は数多くあります。何が違うのですか。
杉浦ほとんどが、社長の理念を上から浸透させるやり方なんですよ。私は逆です。先に、一人ひとりの志を掘り起こします。
どんな人生を送りたいのか。どんな世の中を一緒に創りたいのか。それを本人の言葉にしてもらってから、会社のビジョンと重なるところを、本人自身に見つけてもらう。上から降ってきた理念は覚えて終わりますが、自分の志と重なった瞬間に、その人の言葉になる。会社に使われるのではなく、自分の志で会社に参画している状態です。そこまで行けば、組織は勝手に強くなっていきます。
本音から始める覚悟が、ありますか
編集部うまくいかない可能性もありそうです。
杉浦これは諸刃の剣でもあります。個人の志を深く掘っていくと、実はこの会社でやりたいこととは違った、という本音が出てくることがある。だから始める前に、必ず社長と握ります。それでも一人ひとりの本音から始める覚悟がありますか、と。
ここでうなずけない社長には、私はこのプログラムを売りません。取り繕った一致団結なら、やらないほうがましだからです。
正直、まだ数人。だから、あなたと
100人のうち、まだ数人という現在地
編集部その志に対して、いまの現在地はどのあたりですか。
杉浦正直にお話しすると、まだ数人です。会社を設立したのは今年で、100人という目標から見れば、支援できたのはほんの数人にすぎません。大きなことを言っていても、現実はまだまだ小さい。同じ思いを持つ人とのご縁も、まだ全然足りていない。それが今の、いちばんの壁です。私が救いたいのは、思いはあるのに、それをうまく言葉にできなくて、事業が伸び悩んだり、社員が定着しなかったり、頑張っているのに空回りしている人。かつての私が、まさにそうでした。
こんな人・会社と、つながりたい
編集部これから、どんな人とつながりたいですか。
杉浦2種類の方に、ぜひ声をかけてほしいです。1人は、自分のミッションやビジョン、大事にしたい価値観が、まだ言葉になっていない経営者や個人事業主の方。あなたの中には、必ず軸があります。それを一緒に掘り起こして、武器に変えたい。もう1人は、社員が20人から40人ほどに増えて、方向性がバラバラになりかけている会社の方。核となる人たちの向いている先を揃えれば、組織はもう一段強くなります。そして、そういう人が周りにいたら、ぜひつないでほしいんです。私はまだ、小さな挑戦者の一人です。だからこそ、同じ景色を見ている人と、手を取り合いたいと思っています。
約30年、人に嫌われないように合わせるだけで生きてきた私でも、自分の軸を取り戻したら、見える景色がガラッと変わりました。だから、断言できます。あなたが探している答えは、画面の向こうにはありません。もう、あなたの中にあるんです。最後に、あなたに問いを1つ。あなたは、何のために事業をやっていますか。その問いに自分の言葉で答えられたとき、経営はきっと、静かに動き出します。
会社概要
| 会社名 | 株式会社アトラスパートナーズ |
|---|---|
| 代表者 | 代表取締役 杉浦誠二 |
| HP | https://atlas-partners.co.jp |
| 設立 | 2026年3月 |
| 事業内容 | 経営コーチング/組織コーチング/ビジネスコミュニティ「TANE」運営 |
※2026年7月13日時点の情報です。
あなたの志も、聞かせてください
KOKOROZASHIは、挑戦する経営者の志を言葉にして残していくメディアです。
まだ語られていない想いが、次の挑戦者の背中を押します。
ご自身の応募も、「この人の話を聞いてほしい」というご推薦も歓迎です。